集合(復習)
\(A,B\)を集合とする
和集合(AまたはB)
\(A \cup B = \{x| x \in A または x \in B\} \)
積集合(AかつB)
\(A \cap B = \{x| x \in A かつ x \in B\} \)
差集合(B以外のA)(A以外のB)
\(A \backslash B = \{x| x \in A かつ x \notin B\} \)
\(B \backslash A = \{x| x \notin A かつ x \in B\} \)
補集合(A以外)
\(A^C = \{x| x \notin A \} \)
高校で習った\( \bar{A} \)も補集合であり、同じである。
数の種類、包含関係
1.数の定義に関しては厳密ではなく、曖昧なものになっています。ペアノの公理、デデキント切断の説明などはありません。
2.ここに書いてあるものの以外にも数にも種類があります。フェルマー数やブルン定数やアペリーの定数は記述してません。
3.自然数に0は入っても入らなくてもいいので(0)と表記してます。
自然数\( \mathbb{N} \)の世界
自然数(natural number)とは(0),1,2,3,…というように一番なじみが深い数である。自然数全体の集合を表す\( \mathbb{N} \)はNatural numberのNである。
素数と合成数と完全数
ここで説明する数は全て約数に関係あるので約数を確認しておく。例として12の約数を確認する。12は1,2,3,4,6,12で割り切れるので12は1,2,3,4,6,12の6つが約数であるといえる。ここで、1とその数以外に約数を持たない1以上の自然数のことを素数(prime number)という。逆に、1とその数以外に約数を持つ1以上の自然数、すなわち素数ではない1以上の自然数のことを合成数(composite number)という。よって素数でない自然数は合成数、合成数でない自然数は素数であるといえる。先ほど例に出た12は1と12以外にも約数があるので定義より合成数である。
ちなみにちなみに!2つの素数の積で表される数を半素数といいます!
素数が無限に存在する証明は中学生でもできるが、差が2である双子素数が無限に存在しているのかは分かっておらず現在も未解決である。
先ほどは約数の個数に着目したが今度は約数の和に着目する。
- 6の約数の和は1+2+3+6=12
- 10の約数の和は1+2+5+10=18
- 12の約数の和は1+2+3+4+6+12=28
それぞれの和と、元の数字の2倍の大小関係を比べてみると
- 6の場合、6×2=12と約数の和12から、約数の和と等しい
- 10の場合、10×2=20と約数の和18から、約数の和のほうが小さい
- 12の場合、12×2=24と約数の和28から、約数の和のほうが大きい
のように、自然数は以上の3パターンに分かれる事がわかる。
6のように元の数の2倍と約数の和が等しい数のことを完全数(perfect number)という
10のように元の数の2倍より約数の和が小さい数のことを不足数(deficient number)という
12のように元の数の2倍より約数の和が大きい数のことを過剰数(abundant number)という
完全数は自然数の中では特に珍しく6番目の完全数は8,589,869,056ととても大きい
それぞれの定義は「元の数と自分を除いた約数の和が等しい・大きい・小さい数のことを○○という」と同値である
メルセンヌ数
\( 2^n-1 \) (nは自然数)である数をメルセンヌ数(Mersenne number)という。特に素数であるメルセンヌ数をメルセンヌ素数(Mersenne prime)という。
メルセンヌ素数が無限に存在するのかは未解決である。
フィボナッチ数
\( F_{n+2}=F_n+F_{n+1} \)と表される数列をフィボナッチ数列(Fibonacci sequence)といい、各項の値をフィボナッチ数(Fibonacci number)という(ただし\( F_0=0 , F_1=1 \))。特に素数であるフィボナッチ数をフィボナッチ素数(Fibonacci prime)という。フィボナッチ数列の具体的な値は0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,…である。
このフィボナッチ数列は”前の前の項”と”前の項”を加えたのを並べただけという単純明快な数列であるが、自然界のあらゆる場所に存在し、かの有名な黄金比(後述)にも関係があるというとても面白い数列である。
メルセンヌ素数同様、フィボナッチ素数が無限に存在するかも未解決である。
これが今回説明した自然数の包容図である。
整数\( \mathbb{Z} \)の世界
整数(integer)とは-3,-2,-1,0,1,2,3,…というように自然数とマイナスの自然数を合わせたものである。整数全体の集合を表す\( \mathbb{Z} \)はドイツ語で「数」を意味するZahlenのZである。
任意の整数は偶数奇数で2つに大別される。ある数が2で割り切れるときその数を偶数(even number)、2で割り切れないときその数を奇数(odd number)という。先ほど話した約数でいえば、2を約数に持つ数を偶数、2を約数に持たない数を奇数ともいえる。当たり前ではあるが偶数でない整数は奇数、奇数でない整数は偶数であるといえる。
整数に関して他に言うことがないので偶数と奇数に関しての和と積の公式を載せておく
偶+偶=偶 偶+奇=奇 奇+奇=偶
偶×偶=偶 偶×奇=偶 奇×奇=奇
これが今回説明した整数の包容図である。
有理数\( \mathbb{Q} \)の世界
有理数(rational number)とは\( \frac{整数}{整数} \)で表される数である(分母の整数は0でない数)。有理数全体の集合を表す\( \mathbb{Q} \)はイタリア語で「商」を意味するquozienteのQである。
有理数とは簡単に言うと分数で表される数のことである。それだけで終わると有理数の説明がこれで終わってしまうので分数ではなく小数の世界についてここでは示す。
小数には大きく3つに分けられる
- 桁が有限で循環しない
- 桁が無限で循環する
- 桁が無限で循環しない
桁が有限である小数を有限小数(finite decimal?)という。有限小数の例として、\( \frac{1}{2}=0.5 \) や\( \frac{1}{5}=0.2 \)がある。
桁が無限である小数を無限小数(infinite decimal?)という。無限小数の例として、\(\frac{1}{3}=0.333333…\) , \( \frac{1}{6}=0.16666… \), \( \frac{1}{7}=0.14285714285…\)、また\( \sqrt{2}=1.41421356… \) , \( \pi=3.141592653589… \), \(e=2.718281828… \) , \( \log_{10} 2=0.3010… \)などがある。始めの3つのようにある数字が繰り返されていたり、循環している無限小数のことを循環小数(recurring decimal)という。表記として\( 0.3333…\)の場合は\( 0.\dot{3}\)のように、\( 0.14285714285…\)の場合は\( 0.\dot{1}4285 \dot{7}\)のよう循環している始まりと終わりに数字の上にドットを書いて表す。
桁が無限であり循環しない小数は無理数(後述)といい、\( \frac{整数}{整数} \)のように表せないので有理数には属さない。
有限小数、無限小数、循環小数は次のような構造となっている


これが今回説明した有理数の包容図である。
実数\( \mathbb{R} \)の世界
実数(real number)とは数直線上にある数である。小中学生が習う数は全てこの実数の範囲である。実数全体の集合を表す\( \mathbb{R} \)はReal numberのRである。
実数は有理数と無理数でできており(有理数でない実数は無理数、無理数でない実数は有理数)、無理数が実数の中の大部分を占めている。
先ほども少し言ったが、循環小数ではない無限小数のことを無理数(irrational number)という。例として\( \sqrt{2}=1.41421356… \),\( \phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}=1.61803398875…\)や \( \pi=3.141592653589… \),\( e=2.718281828… \),\( \log_{10} 2=0.3010… \)がある。
(無理数も2つの種類があるのだがそれは複素数の世界で話す)
上の\( \phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2} \)はフィボナッチ数列の説明にも少し出てきた黄金数(golden number)のことである。\( 1:1.618…=1:\phi \)のことを黄金比(golden ratio)という。フィボナッチ数列の比の極限が黄金比であり、これは(\( \lim_{n \to \infty} \frac{F_n}{F_{n-1}}=\phi \))と同値である。黄金数には芸術に多く用いられており、それは数学も例外ではなく美しい連分数表示や美しい性質も多数持っている。仲間に白銀比、青銅比などがある。
これが今回説明した実数の包容図である。
複素数\( \mathbb{C} \)の世界
複素数(complex number)とは複素数平面上にある数である。一般に実数\( a , b \)と虚数単位\( i \)(後述)で\( a+bi \)と表せる数である。複素数全体の集合を表す\( \mathbb{C} \)はComplex numberのCである。
様々な種類を言う前に、根本的な虚数単位\( i \)の定義を示しておく。
\( x^2=-1 \)の正の解を\( i \)とする。簡単に言えば\( i=\sqrt{-1} \)である。虚数単位の\( i \)とは虚数を意味する「imaginary number」の\( i \)である。
\( a+bi \) の\( a \)を実部(real part)、\( b \)を虚部(imaginary part)という。また、実数を直線で表現したように、複素数は平面で表現し、それを複素数平面(complex plane)という。一般的に言うx軸のことを実軸といい、これには実部が対応する。y軸のことを虚軸といい、これには虚部がそれぞれ対応する。

実数には大小という概念があったが、実数以外の複素数(→虚数)は大小という概念がない。このことは実数から複素数に拡張した際に実数までにはあった基本的な性質が損なわれているということになる。
初歩的な複素数分類
虚部が0でない複素数のこと虚数(imaginary number)という。例として、\( i , 1+i , 2i , 3+\frac{1}{3}i , 2+\sqrt{2}i \)などがある。これは複素数平面における実軸以外の点の集合である。特に、実数が0である複素数を純虚数(purely imaginary number)という。例として、\( i , \frac{1}{4}i , \sqrt{2}i \)などがある。これは複素数平面における虚軸上の点の集合である。
ここから先は難易度が少し高いので注意
代数方程式の解
代数方程式(algebraic equation)とは\( (係数)\times {(変数)}^{(自然数)}\)の結合で表される一変数の方程式である。身近な例では一次方程式や二次方程式が当てはまる。指数方程式、対数方程式などは含まれない。
ここで、代数方程式の解を考える。例えば任意の整数\( a \)は\( x-a=0 \)という方程式の解である。同様に任意の有理数\( \frac{p}{q} \)は\( qx-p=0 \)という方程式の解である。しかし無理数は\( \sqrt{2} \)のように\( x^2-2=0 \)という代数方程式で表されるものと、円周率\( \pi \)のようにどんな代数方程式でも表せられないものの2つがある。
\( \sqrt{2} \)や\( x^2=-1 \)の解である\( i \)のように代数方程式の解で表される数のことを代数的数(algebraic number)という。先ほど言った通り有理数は全て代数的数である。同様に\( a ,b \)が有理数である虚数\( z=a+bi \)は二次方程式\( (x-z)(x+z)=0 \)の解であるので全て代数的数である。(一応言っておくと、\( \pi+i \)や\( 1+ei \)は超越数係数の虚数なので代数的数ではない)。数2でやった1の3乗根\( \omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \)も代数的数である。反対に円周率\( \pi \)のように代数方程式の解で表されない数のことを超越数(transcendental number)という。ネイピア数\( e \)は超越数である。任意の無理数が代数的数かどうか判別できる手段は判明していなく、無理数を一つ一つ証明して確かめる方法しかない。
ちなみにギリシャ三大難問に「とある円と同じ面積の正方形を作図できるか?」という問題という問題があるが、これは円周率\( \pi \)についての代数的数か超越数かの問題と同値で、円周率\( \pi \)が超越数であるということが証明されたことで上の問題は”できない”という答えとなった。
これが今回説明した複素数の包容図である。
複素数の外側の世界
実数は1つの指標(元)で動いている(構成されている)といえる。幾何でいうと先ほども言った直線であり。(3)にあたる数字は3、(-4)にあたる数字は-4のようにあたる。
複素数は2つの指標(元)で動いている(構成されている)といえる。幾何でいうと平面、(4,6)といえば\( 4+6i \)、(0,1)といえば\( i \)のようにあたる。
ここで4つの指標(元)で動いている(構成されている)数を定義する。すなわち(1,2,3,4)や(3,1,4,1)というものを数としてみなす。4つの元で構成されている数であるのでこれを四元数と定義する。
四元数(quaternion)とは4つの元で構成されている数である。複素数の場合、実数\( a, b \)と虚数単位\( i \)を用いて\( a+bi \)のように表していた。四元数の場合は一般に実数\( a,b,c,d \)と四元数の単位\( i,j,k \)で\( a+bi+cj+dk \)で表す。四元数全体の集合は\( \mathbb{H} \)と表し、これは発見者のハミルトンのHamiltonのHである。
複素数同様、四元数にも大小はない。加えて、複素数までには当たり前だった積についての交換法則(例として:\( a \times b = b \times a \)や\( b \times i = i \times b \))が成り立っていたが四元数では成り立たない。すなわち\( i \times j \neq j \times i \)となる。このことは複素数から四元数に拡張した際に複素数までにはあった基本的な性質が損なわれているということになる。
複素数は2次元での回転を表したように四元数は3次元での回転を表すのに用いられる。
解答:三元数は定義しようと思えば\( a+bi+cj \)のように定義ができるが、三元数は扱いにくく、根本的に任意の三元数が四則演算で閉じているとは言えない。結果、矛盾も多く三元数は利用されないのだ。
四元数の外側にも数があり五元数、六元数、七元数、…と続いていくが\( 2^n \)元数以外は三元数同様扱いにくく、四則演算について閉じていない(定義できない)。一方、次の\( 2^n \)元数である八元数\( \mathbb{O} \)(octonions)は四元数の拡張としてほぼ不便ない数であるが、四元数までにはあった積についての結合法則が成り立たたなく、十六元数\( \mathbb{S} \)(sedenion)はそれらに加えて、交換法則やノルムの乗法も成り立たない。それ以降の\( 2^n \)元数も今まででは当たり前であった性質が消えゆき、扱いにくいのであまり利用されない。ちなみにこれら○元数をまとめて多元数(hypercomplex number)という。
これが今回説明した複素数の外側の包容図である。